設備導入の相談を受けている宮下と申します。
産業機械の専門商社で11年、技術営業として液剤の塗布設備を担当していました。
2液性樹脂の工程をこれから立ち上げる方から、決まって受ける質問があります。
「材料メーカーと装置メーカー、どっちに先に話を持っていけばいいんですか」
順番なんて些細に聞こえますが、ここを間違えた案件が検討ごと半年戻るのを何度か見ています。
装置メーカーの申込書は、材料の話から聞いてくる
定量吐出ディスペンサを手がけるナカリキッドコントロールのテストルーム申込フォームには、こういう欄が並んでいます。
- 主剤の粘度と硬化剤の粘度
- 配合比率
- 比重
- フィラー含有の有無
- ポットライフ
装置への希望より前に、材料の欄があります。
この欄を自社だけで埋められる会社は、ほとんどありません。
決める項目を、答えの持ち主で並べ直すとこうなります。
| 決めたいこと | 答えを持っている先 |
|---|---|
| 主剤と硬化剤の粘度、比重 | 材料メーカー |
| 混合比、可使時間、硬化条件 | 材料メーカー |
| 洗浄に使える溶剤 | 材料メーカー |
| 吐出量、塗布パターン、タクト | 自社の生産技術 |
| 計量精度、配管内での滞留時間 | 装置メーカー |
上半分がまるごと材料メーカーの持ち物です。
信越化学工業の放熱用ギャップフィラーSDPシリーズを見ると、配合比率100:100、25℃での粘度がA液181Pa・s/B液162Pa・s、比重3.25が最初から並んでいます。
装置メーカーが聞く項目の多くは、材料側にとっくに用意されている数字です。
では材料メーカーに先に行けば済むのか
順序としては、材料が先です。
これは材料メーカー自身がそう書いています。
セメダインの接着ガイドには、接着剤の選定は要求条件を満たすことが絶対条件で、その後に選定した接着剤に合わせて塗布条件を決めるのが好ましい、とあります。
ただし同じ段落に、現実には生産性や既存ラインの条件が優先されることもある、とも添えられています。
材料メーカーに丸投げすればいいかというと、それも違います。
マコーの接着ゼミには、使う側の技術者の立場からこうあります。
接着剤メーカーは自社で扱う中からしか候補を出せないので、紹介されたものが最適とは限らない。
長所は説明されても欠点はあまり説明されず、試作を始めた段階で課題が表面化して選定が振り出しに戻ることはよくある、と。
材料が先というのは、材料メーカーに決めてもらうという意味ではありません。
材料を決めきる前に、装置側へ持ち込む
勧めているのは、材料を1つに絞りきる前に装置側へ当てる順序です。
- 材料の候補を2〜3グレードまで絞る
- その段階で装置メーカーに実機テストを申し込む
- 装置側から出た制約を、材料メーカーに戻して再検討する
装置側から返る制約は、だいたい3つです。
洗浄溶剤が現場で扱えない、可使時間が短く配管やミキサ内の滞留時間に収まらない、フィラーの摩耗でポンプ部品の交換周期が読めない。
このうち可使時間は、配合比の調整や硬化遅延剤で材料側が作り込める部分だと、ペルノックスの用語解説にも書かれています。
商社時代にいちばん重かった失敗は、材料の型番も硬化条件も社内承認まで通してから装置を探しに来られた案件でした。
フィラー含有率が高く比重が3を超える放熱材で、受けられる装置構成が限られました。
材料の再承認からやり直しになり、量産は半年遅れています。
装置側の実力は、カタログの数値だけでは判断がつきません。
比重の重い材料が実際にどう扱われているかは、放熱用ギャップフィラーの混合吐出をロボットで実演しているページのような映像で見ておくと、テスト依頼の話が早く進みます。
まとめ
材料が先です。
粘度も混合比も可使時間も、材料が決まらなければ数字が出ず、装置メーカーは選定に入れません。
ただし社内承認まで固めてから持ち込むのは早すぎます。
候補を2〜3に絞った時点で装置側に当て、返ってきた制約を材料メーカーへ戻す。
この往復1回で後戻りの量が変わります。
両者とも、自社の守備範囲の答えしか持っていません。
つなぐのは結局、自社の生産技術の仕事です。
最終更新日 2026年9月9日 by fletww